建設業の人手不足は、AIを入れれば解決する種類の問題ではありません。人が足りないところに、人ではないものを置いても人は増えないからです。
それでもAIが効く場所はあります。どこに効いて、どこに効かないのかを分けて書きます。効果の数字は載せません。出どころを確かめられない数字を並べても、判断の役に立たないためです。
採用がうまくいかない理由は、たいていAI以前にある
現場からよく聞く話を並べると、こうなります。
- 求人票に書いてあることが、実際の仕事と違う
- 応募から連絡までに日数がかかり、その間に他社で決まる
- 面接で仕事内容を説明しきれず、入社後に「思っていたのと違う」となる
- 教える側に時間がなく、新人が放置される
このうち**2番目(連絡の遅さ)と3番目(説明の不足)**は、仕組みで改善できます。1番目と4番目は、仕組みより先に中身の問題です。
AIが効く場所
求人票を書き直す
「未経験歓迎」「アットホームな職場」だけでは、何をする仕事か伝わりません。実際の一日の流れ、扱う道具、体力の要る場面、繁忙期。こうした具体を引き出して文章にする作業は、AIが下書きを作れます。
ただし材料は現場から出す必要があります。 現場を知らないまま生成すると、どこの会社にも当てはまる文章になり、結局は伝わりません。
応募後の初動を速くする
応募があったその場で受付を返す、よくある質問(勤務地、資格の要否、社会保険、寮の有無)に自動で答える。ここは効果が出やすい部分です。決まった答えがあるものだけを扱い、条件の相談や日程調整は人へ渡します。
説明の材料をそろえる
現場の写真や動画に説明を付ける、作業手順を文章に起こす、といった下ごしらえは手軽になりました。面接で見せる材料が増えると、入社後のずれが減ります。
書類仕事を減らす
日報、安全書類、報告書の下書き。採用そのものではありませんが、教える側の時間が空くことが、結果として育成に効きます。ここを軽く見ないほうがよいと考えています。
AIが効かない場所
技術の継承
現場の勘所は、言葉になっていない部分が多く残ります。文章や動画に残せるのは一部です。「AIで継承できる」と考えると、残せなかった部分が失われたことに気づけません。 残せるものは残し、残せないものは人から人へ、という前提を持つほうが安全です。
応募者の選別
応募者をAIで自動的に絞り込むことは、技術的にはできますが勧めません。過去の採用の傾向をそのまま学ぶため、これまでの偏りを引き継ぎます。加えて、なぜ落としたのかを説明できない選考は、後から問題になります。
書類の整理や要約までにとどめ、判断は人が行う。この線は守ったほうがよいと考えています。
安全の判断
現場の危険を検知する仕組みは実用化が進んでいますが、それは注意を促すものであって、責任を引き受けるものではありません。 「AIが警告しなかったから」は理由になりません。
順番をつけるなら
- 求人票を、現場の言葉で書き直す(AIは下書き役)
- 応募後24時間以内に必ず反応が返る状態を作る
- 説明の材料(写真・手順・一日の流れ)をそろえる
- 書類仕事を減らして、教える時間を作る
1から3は採用に直接効きます。4は遠回りに見えて、離職に効きます。
まとめ
AIは、伝える・返す・まとめるは得意です。選ぶ・教える・責任を持つは人の仕事のままです。
この切り分けを持ったうえで、自社の採用のどこが詰まっているかを見ると、手をつける場所がはっきりします。AIを入れることが目的になると、たいてい詰まっている場所とずれます。
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